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風土が育む日本の技術知 ―地球社会的知への止揚―
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『風土が育む日本の技術知 ―地球社会的知への止揚―』
尾坂芳夫 著

定価(本体1,900円+税) A5判、268頁
ISBN978-4-925085-68-7 C3040
(2003年4月刊行)

《目 次》
1 風土が育む日本の技術知を考える視点
  a 技術知の個性の育む風土と自然
  b 人間の生命力としての技術知と、現実体験としての根源的な技術
  c 文明の潮流を母体とする科学技術の発達
  d 技術知の東アジア的土壌の源泉
2 日本の技術知の原始型を尋ねる
  a 縄文の感性と工芸的技能と技術知
  b 渡来人と一緒に流入した稲作と金属器が生み出した文明社会
  c 奴隷制的な社会構造による生産技術の分類と模倣
3 日本風土に芽生えた知性と感性
  a 労働から開放された、自由な知に現れた民族の心性
  b かな文字の発明と創造的な感性知の発現
  c 建築技術の世界に現れた知の模倣性と創造性
4 階層身分秩序とムラ社会の意識に捕縛された技術知
  a 技術知の自由を疎外した、階層秩序を志向する社会意識
  b 階層身分支配の形成を援けて自縛した農業技術
  c 武家支配の社会秩序に忍従した工業技術と順応した商業
  d 領国の基盤づくりとしての土木技術に現れた風土性
  e 階層身分秩序に忍従的な社会の研究・教育・学習の意識
5 科学技術文明の刺激による目覚め;模倣・習得の紆折と創造への努力
  a 鎖国による、視野と自由と厳しさの喪失;技術文明へのイノセントと焦りと過信
  b 和魂洋才が枷となる科学技術の翻訳・模倣・収奪
  c 技術教育の理念・制度・方法の模索
  d 日本風土が育んだ技術知の個性;模倣・改良と創造への努力
6 繁栄秩序へ向けて、日本風土が育む技術知の止揚
  a 現代の深層に潜む古来の嘉苗の心性
  b 科学技術の発展を妨げる、今日に現れた社会共同の心性
  c 心の豊かさをつくる技術知;日本固有の心性と理性的合理主義の止揚
  d 科学技術の創造的教育研究の方法理念


 科学技術は、高度に発達して人類に豊かさをもたらしているが、一方で経済至上主義と共振して、近年は、環境の悪化、殺戮兵器の先鋭化などの大きい困難を突き付けている。著者は、このような困難を抑制しながら全民族の繁栄に繋がる秩序を探ろうとするときに、日本の風土に育まれた、自然親和的な忍従的な感性豊かな心性と技術知が本質的な役割を果たすに違いないとの信念を述べている。そして、長い歴史のなかに日本の技術知の本性を探り、ヨーロッパ的な理性的合理主義との止揚を図ることの必要を述べ、日本固有の文化を大切にしながら科学精神の根源に遡った教育を行なうための方法理念を説いている。